音楽科教育とICT ―ICTを活用した効果的な指導のために

ONKANウェブネット > 音楽科教育とICT > 電子黒板活用報告 > 全日本音楽教育研究会全国大会 公開授業リポート

電子黒板活用報告
全日本音楽教育研究会全国大会 公開授業リポート

 去る11月5日、6日両日、全日本音楽教育研究会全国大会総合大会東京大会が開催され、各会場は全国各地から集まった参観者により大いに賑わいました。府中の森芸術劇場で開催された中学校部会では、清水宏美先生(立川市立立川第二中学校教諭)と小作典子先生(福生市立福生第三中学校教諭;当時)が電子黒板や音鑑「授業支援ツール」といったICTを活用し、その指導内容とともに注目を集めました。ここでは両先生の取り組みをご紹介したいと思います。

DVD再生にもICTを活用 ―小作典子先生の活用例

題材:曲想に合った奏法を選び、表現を工夫しよう
主な教材:歌劇「魔笛」より「これは何とすばらしい響きだ」(モーツァルト作曲)

 小作典子先生の授業はアルトリコーダーの演奏指導で、旋律から生み出される曲想を感受し、そこから奏法(アーティキュレーション)を工夫することで音楽表現を深めることがねらいでした。電子黒板の活用方法としては、

  • 学習カードの提示(前時の振り返り)
    楽譜(電子黒板のペン機能を使って、演奏のポイントを色分けして記入したもの)
    アルトリコーダー運指表
    アルトリコーダーの奏法を分類した表(ノンレガート奏法、スタッカート奏法、テヌート奏法、レガート奏法、それぞれの楽譜上の表記とタンギングの方法を示したもの)
  • 学習カードの提示(今日の授業のポイント)
  • 歌劇「魔笛」DVD再生
  • 学習カードの提示(子どもたちが、工夫した奏法を各自学習カードに書き込む際の記入例を示したもの)

などが挙げられます。これらの教材は電子黒板に接続されたパソコンにセットされており、簡単な操作で一瞬にして子どもたちに提示できることで授業がとても円滑に進んでいるように感じられました。とはいえ、授業の最初から最後まで終始電子黒板を使うというわけではなく、常時掲示しておきたい内容は模造紙に拡大印刷して貼り出し、ピンポイントで指導する内容は電子黒板で示すというふうに使い分けをされていました。こうしたメリハリのある使い分けは、子どもたちが今何に注目して学習を進めればよいかを把握しやすくなり、学習内容の理解促進にもつながる期待をもてるものでした。

 また、DVDはパソコンで再生し、映像は電子黒板に、音はアンプを通してスピーカーから流していましたが、子どもたちが目を輝かせながら画面に見入っていたことがとても印象的でした。パソコン、電子黒板とオーディオ機器を組み合わせることで、迫力のある大画面とよい音で音楽を鑑賞することが可能となります。効率と効果の両面からアプローチした、音楽科ならではのICT活用方法だと思います。


ペン機能を使って楽譜に書き込み


音鑑「授業支援ツール」で授業構築 ―清水宏美先生の活用例

題材:「花筏」の曲想を味わい、箏の特徴を生かして奏でよう!
主な教材:―箏の基礎的な奏法を生かして奏でる―「花筏」(沢井忠夫作曲・清水宏美編曲)

 清水宏美先生の授業は箏の演奏指導で、箏の基本的な奏法を身に付けながら、箏の特徴を生かして楽曲にふさわしい表現の工夫をすることがねらいでした。音色や旋律、テクスチュア、間や序破急など、要素の働きが生み出す、我が国の伝統音楽の特質や雰囲気を感受することに重点が置かれていました。

 小作先生同様パソコンを使って、画面は電子黒板から、音はアンプを通してスピーカーから流していました。さらに、清水先生は教材の提示に音鑑開発のソフトウェア「授業支援ツール」を用いており、その活用方法は非常にユニークなものでした。

 子どもたちに配布している学習カードを拡大したものを、学習のステップ毎に授業支援ツールに貼り付け、授業では指導の流れに順じてページをめくっていきます。ICT機器を教材提示のみに使うのではなく、子どもたちの学習ステップに同調させることで指導の基軸として活用してみようという試みです。

 文字量の多い学習カードを電子黒板で提示すると、50インチの大画面とはいえさすがに字が小さくなってしまい、教室の後ろのほうに座っている子どもたちからは見えにくくなってしまいます。しかし、清水先生はその効果について「電子黒板に書かれている文字を読ませるのが目的ではありません。子どもたちの手元にも同じ学習カードを配っており、私が電子黒板で学習カードを直接指し示すことで、子どもたちは学習内容を即座に把握できるのです」とおっしゃっています。

 学習カードを軸に、ページをめくっていくと様々な仕掛けがしてあります。画面上のボタンを押すと音楽が鳴り出し、中国や韓国の箏と日本の箏の演奏を比較聴取できます。音源は授業のためにパソコンに取り込んでおり、CDのかけ換え等は一切不要です。子どもたちの集中力を途切れさすことなく、音楽鑑賞することができます。他にも、学習カードや楽譜の上に、ペン機能を使って演奏のポイントとなる箇所を書き込んだり、我が国の音楽の音と音とのかかわり合い(テクスチュア)を記したカードを教材ボックスから取り出して楽譜の上に貼り付けたりと、授業支援ツールの機能をフルに活用されていました。

 清水先生も、電子黒板と授業支援ツールを使いながらも、必要な部分は模造紙に印刷した拡大楽譜を使ったり、ホワイトボードを使ったりと、それぞれの教具の特性を十分に生かすことができるように工夫されていました。


授業支援ツールの画面



 どちらの授業においても、ICTを活用した指導が、音楽科においても十分に効果のあるものだということを、実践を通して示してくださったと思います。清水先生は、パソコンなどの操作にあまり慣れていないとのことでしたが、操作のコツを早々に掴み、スムーズに授業で使用されています。小作先生は、機器の操作に非常に堪能で、ご自分で様々なソフトウェアを駆使して教材を準備されています。ICTに不慣れな先生でも簡単に操作でき、堪能な先生はより深く活用することができる、これが電子黒板や授業支援ツールの大きな魅力です。是非、これからみなさんがICTを授業に導入するにあたり、両先生の取り組みを参考にしていただければと思います。


(音鑑事務局 林田壮平)

ページの先頭へ戻る