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Report & Information 2010年2月

GLOBAL 森重行敏

〈BOOK & PERFORMANCE〉
世界を打ち鳴らせ・サムルノリ半生記
世界を打ち鳴らせ・サムルノリ半生記

キム・ドクス著 清水由希子訳 (岩波書店 本体2,800円+税)

 昨年春の出版であるので最新刊とは言い難いが、ご紹介できなかったのであらためてご推薦。かつては旅芸人の芸能の一部であった打楽器合奏を1978年代に独立させたサムルノリ。その圧倒的な迫力によりあっという間に韓国を代表する音楽として内外に知られるようになった。サムルノリは本来ひとつのグループ名であるが、類似のグループも次々と生まれ、いつの間にか音楽の種目の名称となってしまった。その創始者である著者の半生は、その音楽にも似て、読むものを圧倒する迫力がある。旅芸人の一座に生まれ、5歳にして初舞台という環境。芸術専門の中学では、境遇を見かねた学校の配慮で校舎に寝泊まりしていたというのも壮絶。幼くして父や先輩の芸を見よう見まねで習得したため、チャンゴのバチの持ち方が左右逆になってしまったというエピソードも紹介される。
 10代からすでにその力量が知られ、世界各国でも演奏。ある時期、1年の半分は日本各地で韓国芸能団のリーダー的存在として演奏していたという。彼が失われつつあった伝統の改革と再生に取り組むに至ったのは、日本を含めた海外で養われた国際的な視野があったからというのも、おおいにうなずけるものがある。日本における和太鼓合奏にも似たような経緯がある。日韓どちらも、本国より外国での評価が高いというのも符合する事実である。伝統の再生というテーマの難しさと希有な成功例として、かけがえのない好書。


唱歌・童謡100の真実
唱歌・童謡100の真実

竹内貴久雄著 (ヤマハミュージックメディア 本体1,800円+税)

 明治の唱歌、大正の童謡と並び称されるが、確かに昭和の歌謡曲へと続く日本の洋楽史の不可欠の1こまであろう。その割には、まだ本格的な研究が進んでいるとはいえない面もある。ひとつの元凶は文部省唱歌として作詞作曲者名を公表しなかったことにもあり、いまだに作者探しが続いているのはいささか歯がゆくもある。その後の作品も不完全な楽曲解説が繰り返されて来たのも事実。本書は丹念な原典探しが特徴で、中には従来の定説を覆すような発見もある。それにしてもどの曲にも知られざるエピソードが満載で、まだまだ謎が多いことに驚かされる。『黄金虫』がゴキブリのことであったり、『赤い靴』のモデルの真実など、びっくりさせられる。時代により歌詞の修正があることも複雑で、年代により覚えている文句に違いがある。万全な本書に敢えて注文があるとすれば、古い歌詞なども全部収録してもらえれば参考になっただろう。


神楽歌
神楽歌

2010年2月27日14時 国立劇場小劇場

 雅楽のレパートリーの中でなかなか公開されないのが神楽。いわゆる里神楽は各地の神社で奉納されるが、これは宮中祭祀のためのものであるだけに、本来は非公開のもの。和琴や神楽笛など、他の種目ではお目にかからない楽器も使われる。

SCHOOL 佐野靖

〈BOOK REVIEW〉
教師のためのピアノ伴奏法入門
教師のためのピアノ伴奏法入門

鈴木渉著 (東洋館出版社 本体2,200円+税)

 小学校の歌唱共通教材24曲を網羅した本テキストは、著者の教員養成における指導経験と課題意識から生まれたものである。共通教材の伴奏が意外に弾きにくいという学生の実態に気付いた著者は、個々の技能レベルに応じた編曲を提示する必要性に迫られたのである。そうした成果が本テキストに結び付いている。特徴は、各学年に1曲ずつ配当されている日本の音構成による共通教材(『ひらいたひらいた』など)には2種類の、ほかの3曲には3種類の伴奏が付けられていることである。しかも難易度が考慮されているために、技能レベルに応じて選択したり練習したりすることが可能である。コードネームの学習もできるよう工夫された実践的なテキストである。


廃校のうた
廃校のうた

菅谷誠著 (柏艪舎 本体1,800円+税)

 本書は、北海道のへき地で廃校となった4つの小中学校に徹底した取材を行ない、記念誌や町史、沿革などの文献に加え、さまざまな世代への聞き取り調査をとおして、客観的な事実と時代の証言、人々の思いなどを集め、つなぎ合わせたルポルタージュである。対象となった4校は、歌登町立辺毛内小学校(昭和60年廃校)、神恵内村立川白小中学校(平成10年廃校)、苫前町立三渓小学校(平成2年廃校)、利尻町立久連小学校(昭和62年廃校)。歴代の元校長や教員、卒業生など数多くの人たちへの取材によって、学校や地域の歴史、生活状況、四季の移り変わりなどまで浮き彫りにされているが、いずれの学校においても「うた」が重要な位置を占めている。
 校歌をもたなかった辺毛内小学校では、開拓の労苦をしのぶ『辺毛内讃歌』が閉校式でも歌われた。川白小中学校では、昭和30年代の校歌づくり(作詞:更科源蔵、作曲:木村繁)のくだりが実に興味深い。三渓小学校の場合は、校歌制定が比較的遅かったため、元校長が即興でつくった運動会の応援歌が歌い継がれていたという。久連小学校校歌の作曲者は、日本を代表する作曲家・廣瀬量平である。廣瀬はこの学校の出身ではないが、小学校時代の恩師の依頼で、東京芸大在学中に初めての仕事として校歌作曲を手がけたのである。
 本書の著者は、「あとがき」で次のような偽らざる心境を綴っている。「一取材者に過ぎないわたしが、母校を喪失した人々の感慨をはかること自体、僭越とのそしりを免れないであろう。であっても、本書に扱った四つの学び舎を訪ね直す『旅』のさなか、『思い出のよすがとなる学校を失ってしまった』卒業生や、…教育者のかみしめてきた哀歓が、いつも間近にとどまっているような気がしてならなかった、と述べるのを許されたい」と。開拓地や半島の小さな学び舎に響いた子どもたちの明るい声が聞こえてきそうな好著である。

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