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Report & Information 2010年1月

GLOBAL 森重行敏

〈BOOK & DVD & CD〉
音で観る歌舞伎 舞台裏からのぞいた伝統芸能
音で観る歌舞伎 舞台裏からのぞいた伝統芸能

八板賢二郎著 (新評論 本体2,800円+税)

 国立劇場の裏方として伝統芸能全般を支えた著者による「シリーズ・アートマネジメント」の一巻。歌舞伎のみならず、能や文楽の基礎知識にもページが割かれている。実際に歌舞伎を作り上げてきた著者によるものだけに、稽古場での俳優と技術者の一挙一動が見えて来るような描写が印象的。効果音をめぐるさまざまな工夫の挿話も、変化し続ける歌舞伎の裏方技術の様子がよくわかる。さまざまな効果音を実演する著者の写真も貴重なものばかり。巻頭、かつて話題となった日本人の脳をめぐる角田理論にも触れているが、その成否はともかく、日本人の音に対する感覚の独自さはどのような観点からも否定できない。歌舞伎の下座音楽や効果音の多様さは、まさにそうした感覚が求めるものであろう。
近年のアニメやゲームの音楽にも、そうした影響が顕著に現れていると思われる。世界の演劇や音楽に対して日本人が果たす役割はこうしたところにもあるに違いない。
 それにしても口上にあるように、難しい研究書を読むよりともかく楽しい芝居を見物すべきという提言はまさに正論。歌舞伎座のカウントダウンも始まっているが、あとしばらくの歌舞伎座が盛況であることは間違いないだろう。


チェンバロ 歴史と様式の系譜
チェンバロ 歴史と様式の系譜

久保田彰著 (ショパン 本体3,800円+税)

 チェンバロは歴史的には一度消滅したとも言える。1970年代まではモダン・チェンバロという現代的構造のものが一部に存在していたが、その後、古楽の歴史的な研究と関心が高まるにつれ、現在では歴史的構造のものが復活した。そうした古楽復興の初期からチェンバロ建造に携わった著者による様式別の解説が、貴重な映像とともに世に出た。西洋古楽分野での日本人の貢献は各部門で大きいものがあるが、演奏のみならず、調律法や楽器建造という根本的な分野で、日本人の細やかな技術と感性が活かされているのは心強い。ピアノ大国である日本が、その先祖であるチェンバロやフォルテピアノの復興にかかわることは必然でもあろう。一度は本国でも忘れられていた分野であることから、鎖国という日本における洋楽のブランクがハンディにならないのも好都合といえるのかもしれない。邦楽の歴史からみれば、バロック時代ですら決して古い時代とは言えない。この分野の研究復興がますます進むことに期待したい。平均律以外の音律を実践するという点でも、この楽器はもっと普及し、愛好されてよい。和楽器や民族楽器との相性も良いことは注目される。
 それにしても様々なチェンバロの華奢で華麗なこと。この映像と写真だけでも驚嘆に値する。


AGA-SHIO
AGA-SHIO

(avex IOCD-20281 3,150円)

 津軽三味線の上妻宏光とピアノの塩谷哲によるデュオ。バッハ風あり、ジャズ風ありのノンジャンル・アルバム。安易なコラボレーションを避け、予想のつかない、いわば対決とさえ思える組み合わせは、結果としてなかなか鮮烈なサウンドになった。これは聴いてみるまで思いもつかない音楽といえる。

SCHOOL 佐野靖

〈BOOK REVIEW〉
質の高い学びを創る授業改革への挑戦
質の高い学びを創る授業改革への挑戦―新学習指導要領を超えて―

佐藤学・和歌山大学教育学部附属小学校著 (東洋館出版社 本体1,800円+税)

 和歌山大学教育学部附属小学校における平成18年度からの実践研究の歩みが、一冊の本にまとめられた。「発刊にあたって」によれば、附属小のめざす実践は「Less is more.(少ない量で豊かに学ぶ)」、すなわち「時間数(量)ではなく質の高い学び」である。そのために、この3年余り授業環境の改善に尽力した附属小では、カリキュラム開発、少人数学級の実験、情報教育環境整備、ペア・グループ学習など学習形態の工夫、教師のポジショニングの工夫、ワークショップ型授業研究会の工夫などに取り組み、着実に一定の成果を挙げている。そうした数々の取り組みは、結局「学校は内側からしか変わらない」という個々の教職員の思い、納得が大きなモチベーションになったという。

 ここでは、音楽科の2本の実践内容(執筆:江田司)を紹介する。

 まず、「協同的な学びの実際」に位置づけられた「グループ学習~4年生『音楽づくり』の授業から」では、和音から音を選んで副次的な旋律づくりを行なう『歌のにじ』が教材となっている。ここでの留意点は、(1)4人でするべき作業内容(目標)を明確にする、(2)苦手な子どもに対して助けることのできる子どもがグループの中にいるようにする、(3)一人ひとりが動かないと先に進めない課題設定をする、(4)「音楽づくり」の活動では、一人が音を決めていくごとに話し合いがもてる「リレー作曲」の方法を用い、音を吟味する習慣を付ける、(5)音が出来上がっていくことで達成感がもてるようにする、の5点である。例えば、(2)において、メンバー構成や座席配置などにていねいな配慮と工夫がなされている点、(4)において、楽器を使わないで声に出してみることによって音楽づくりが進められている点などはとりわけ特徴的である。

 次に、「『再構成』で音楽の仕組みを学ぶ~まど・みちお〈詩〉への作曲(5年生・音楽)」であるが、これは、一学期に全5時間で実践された旋律創作(歌唱共通教材の『ひのまる』を「再構成」することを通して「反復」のおもしろさを見つけ、モチーフづくりから旋律創作に発展させる活動)がベースとなって展開されており、国語教材の「ケムシ/さんぱつは きらい」の詩に各グループ(男女混合4人グループ)で旋律を付ける活動である。提示された子どもたちの作品はレベルの高いもので、『ひのまる』を用いた学習が、「音楽の仕組み」の気付きから活用へ「つなぐ」役割を果たしたと考えられる。また、実際の音楽をさまざまな要素とそれらの関係性(仕組み)からとらえようと、他の表現活動や鑑賞活動においても子どもたちの気付きや工夫などが大切にされている証しと言うことができる。

 平成22年1月29日(金)、第4回ICT授業研究会が当校にて開催される。詳細は附属小のホームページをご覧いただきたい。

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