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Report & Information 2009年8月

GLOBAL 森重行敏

〈BOOK & PERFORMANCE〉
民族楽器を演奏しよう
民族楽器を演奏しよう

若林忠宏著 (明治書院・学びやぶっく 本体1,200円+税)

 所有楽器2,500点、演奏できる楽器900点という斯界の巨人による、戦後日本の民族音楽受容史。といってもお固い研究書ではなく、戦後の歌謡曲にみられる世界各地の音楽の影響をわかりやすく説いた前半と、民族楽器小事典の後半から成る。ここで著者が力説しているのは、30年以上寝食も忘れて活動してきた著者にとって、一見ワールドミュージックが定着した現在の音楽状況に、むしろ何か肝心なものが抜けていないかという問題提起である。同世代であり、著者の活動を当初から知る当欄担当者も、どこか同じ感想をもつ。それは所詮、情報飢餓だった世代から見た、情報過多世代への妬みなのかもしれないが、未知の文化への想像力のようなものが、あまりに簡単に手に入り過ぎることにより欠如していると言い換えられるのかもしれない。
 戦前・戦後の歌謡曲に起きていたハワイ、ラテン、アジア、ロシアなどの不思議な混交状態も、今みればある種稚拙な対処であったことは確かだが、独特のカオスを生み出していた面もある。その意味で、今、戦後の歌謡曲を単なる懐メロとしてではなく、若い世代にこそ知ってもらいたい新たな音楽として取り上げたことには意義があるのだろう。


シタ~ルのほん
シタ~ルのほん

ヨシダダイキチ著 (プリズム 本体1,000円+税)

 シタールといえばインド音楽を代表する楽器として知られてきた。ビートルズが取り上げた影響もあって、世界の民族楽器のなかでも知名度第1位といっても過言でない。しかし案外日本にその演奏者は少なく、それだけ習得困難なものといえるのだろう。かつてのラヴィ・シャンカールも教則本を出していたが、独自の用語や概念も多く、独学は難しいかもしれない。ところがこの本を読むと何だかシタールが弾いてみたくなる独特の親しみやすさが一杯。副題にインド音楽であそぼう! とあるように、まずはシタールで遊んでみようというコンセプトに満ちたもの。といっても本場で師匠について修業したこともある著者だけに、決して不真面目に取り組んでいるのではない。五線譜を使わずにその雰囲気を伝えようとする努力は、むしろ本当に理解していないと成し得ないものだろう。


永六輔の邦楽おもしろ講座
永六輔の邦楽おもしろ講座

2009年9月6日16時開演 洗足学園音楽大学ブラックホール(川崎市溝の口) 一般1,000円

 洗足学園で毎週開かれているミュージックショーケースの特別版。今回は「アメリカと三味線音楽」がテーマで、アメリカ人作曲家による三味線新曲を中心にしたコンサートと永六輔のトーク。予約・問い合わせは、SENZOKUミュージック・ショーケース事務局。

SCHOOL 佐野靖

〈BOOK REVIEW〉
こころと脳の対話
こころと脳の対話

河合隼雄・茂木健一郎著 (潮出版社 本体1,200円+税)

 2008年に刊行された本書は、月刊誌上のシリーズ対談を再構成したもので、2005年から2006年にかけて行なわれた3回の収録内容、「第1回:こころと脳の不思議」「第2回:箱庭と夢と無意識」「第3回:『魂』を救う対話」から成っている。「生き方」の根源にかかわる臨床心理学者と脳科学者の対話には、教育という点でも多くの示唆や問題提起が含まれている。
 例えば、「安易に『言語化』することの怖さ」では、科学的か否かにかかわって河合は、「全体をアプリシェイト(認識)することが大事であって、インタープリット(解釈)する必要はない」ことを強調する。それを受けて茂木は、脳科学が、現象学的な方向に一方では接続しながらも、分析中心の科学主義との間で引き裂かれている現状を指摘する。このことは、「言語に依存しすぎの現代人」につながり、言語で表現されているのは知覚の一部である、という河合のとらえは、教育に携わる者として重く受け止めなければならない。
 また、「『関係性』とは心のつながり」において、河合は、方法論的な反省の少なさを問題視し、関係性が不可欠であることを指摘する。科学性・論理性と関係性の双方の重要性が強調されているのである。さらに、「ひとつの事例は普遍に通ずる」では、事例研究の意義、事例研究のもつ普遍性が強調される。臨床的な授業研究の意義や価値、あるいは方法論をとらえ直す意味でもきわめて示唆に富むとらえ方である。


伝統や文化に関する教育の充実
伝統や文化に関する教育の充実―その方策と実践事例

中村哲編 (教育開発研究所 本体2,300円+税)

 編者によれば、本書は、「伝統や文化に関する教育について、伝統・文化の性格論、伝統・文化に関する教育課程、その指導方法と授業実践の視点から全国の学校において実践できる手がかり」が示されている。全体は、「伝統や文化に関する教育の充実を図る基本」「伝統や文化に関する教育の充実を図る教育課程編成」「小学校における伝統や文化に関する学習指導の方策」「中学校における伝統や文化に関する学習指導の方策」「東広島市の小・中学校における伝統や文化に関する教育の実践事例」の5章構成で、巻末に「特別寄稿」として山折哲雄氏による「わが国における伝統・文化の性格―新・つれづれ草」が掲載されている。

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