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Report & Information 2009年5月

GLOBAL 森重行敏

〈BOOK & PERFORMANCE〉
こだわりアメリカン・ルーツ・ミュージック事典
こだわりアメリカン・ルーツ・ミュージック事典

鈴木カツ著 (NHK出版・生活人新書 本体900円+税)

 出版後約1年経ってしまったが、これもぜひご紹介したいもののひとつ。先月はアフリカ音楽であったが、こちらはアメリカ音楽の事典。こうしたジャンルはどうやら世界のどこより日本人研究者の得意とするところなのかもしれない。本書は新書サイズに60人のキーパーソンを盛り込んだハンディさも特長。一般にアメリカといえばジャズ、それも黒人音楽の影響が取り上げられるが、ここではむしろカントリー音楽にその視点を向け、さらに黒人ジャズミュージシャンにも視野をひろげている。戦前以来、日本のポピュラー音楽のほとんどがアメリカ音楽の影響下にあるのは疑いもない。本書は単に表面的な流行史を追うのではなく、広い視野でアメリカ音楽を紹介している点が何よりの価値。


未聴の宇宙、作曲の冒険
未聴の宇宙、作曲の冒険

湯浅譲二、西村朗著 (春秋社 本体2,500円+税)

 湯浅氏は武満徹と実験工房に参加するなど、戦後を代表する作曲家のひとりとして活躍を続けている。一方の西村氏は4月から池辺氏に代わってN響アワーの司会者に就任、中堅の作曲家として評価も高い。ふた回り世代が離れたふたりの対談による本書は、図らずも作曲家とは何を考えているのかが浮かび上がって、実に興味深いものとなった。湯浅氏が繰り返し主張するように、現代の作曲家の最後の課題は「未聴」の音楽を作ることにあるのだろう。そこには民族を超えた普遍的な音楽を理想とする立場がある。一方、芸大で小泉文夫に傾倒したという西村氏のアジアに対する思いの強さは、作品にも強力なバックボーンになっているようだ。しかしながら世代や音楽観の違う両者に共通する、作曲への熱い信念は読者の立場としても目を離すことができない。巻末には両人の詳細な年表がある。


箏曲地歌五十選 歌詞解説と訳
箏曲地歌五十選 歌詞解説と訳

田口尚幸著 (邦楽ジャーナル 本体2,300円+税)

 箏曲に限らず、雅楽や尺八を除いたほとんどの邦楽が歌詞をもっていることは言うまでもない。中には百人一首のような著名なものもあるにはあるが、もはや意味がわかりにくいものも多い。国文学者による本書は、現代人が古典を味わうことへの入り口のひとつを作ってくれるに違いない。いくら時代が違うとはいえ、根底では自国の音楽を楽しめないはずがない。今も昔も人の心は変わらないことに気付くであろう。


 いささか手前味噌はご容赦の上、本欄担当者も参加するガムラン関係の行事をご紹介。

ガドガド・ガムラン

2009年6月7日 日暮里サニーホール 15時

 日本でもっとも長く活動している「ランバンサリ」の自主公演。今回は様々な珍しい編成のガムランが登場。

ガムラン・フェステイバル in SENZOKU

2009年6月27日 洗足学園音楽大学ブラックホール 16時

 ジャワ、バリ、スンダ3地域のガムランが集結。地域によって違うガムランのすべてが比較できる企画。

SCHOOL 佐野靖

〈BOOK REVIEW〉
よくわかる授業論
よくわかる授業論

田中耕治編 (ミネルヴァ書房 本体2,600円+税)

 「やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ」の1冊である本書は、「授業づくり」の基礎的・基本的な内容をわかりやすく解説しようとした理論書、実践書。日本の教育界で脈々と築き上げられてきた「授業研究」は、今や世界に「jugyou kenkyuu」(英語表記)として発信されている。「授業づくりの基礎理論」から「授業づくりをめぐる現代的課題」までの全15章から成る本書は、これまでの国内及び海外の「遺産」を踏まえつつそこに学びながら、今日的な動向をコンパクトに明示している。「各領域における授業づくり」の内容、特に音楽科の記述については、頁数の制限を考慮しても不満が残るが、書全体としては、事典的に活用できるようまとめられていて使いやすい。幅広く知識を得るには格好の入門テキストである。


事例から学ぶ「活用型学力が育つ 授業デザイン」
事例から学ぶ「活用型学力が育つ 授業デザイン」

吉崎静夫著 (ぎょうせい 本体2,000円+税)

 本書を貫くキーワードは、「授業デザイン」と「活用型学力」。著者の考える「授業デザイン」とは、「授業に対する思い(思い)」「授業の発想(発想力)」「授業の構成(構成力)」「授業で用いる教材の開発(教材力)」「日常生活での問題意識(問題意識)」の5つの構成要素で成り立つという。また、「活用型学力」とは、基礎的・基本的な知識・技能の習得(「基礎型学力」)と、課題を発見・追究する力(「探究型学力」)との間に位置付けられるもの。「学習意欲を高める授業デザイン」「オリジナル教材を生かす授業デザイン」「カリキュラム開発と連携する授業デザイン」などのテーマのもと、豊富な事例が提示されていて、各事例の「意義」についての端的なコメントが授業をとらえる重要な視点となっている。


授業デザインの最前線:理論と実践をつなぐ知のコラボレーション
授業デザインの最前線:理論と実践をつなぐ知のコラボレーション

高垣マユミ編著 (北大路書房 本体2,500円+税)

 10章構成の本書は、各章が「授業の理論編と実践編」から成り立っている点が特徴的である。章ごとに簡潔なまとめと推薦図書が付いている点はありがたい。7章「授業の効果を上げる」のまとめにおける「理論と実践をつなぐポイント」、すなわち、(1)「理論研究の中で見いだされてきている諸知見を無批判的にそのまま教育現場に当てはめないこと」と、(2)「自分が日頃生きている世界の“ものさし”のちがいを認識したうえで、研究者と実践家がいっしょになってひとつの実践をあらゆる角度から検討・研究し合う真の意味での『学びの共同体』をつくり、恒常的に努力していくこと」はとりわけ示唆深い。

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