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Report & Information 2009年4月

GLOBAL 森重行敏

〈BOOK & DVD & PERFORMANCE〉
ポップ・アフリカ700
ポップ・アフリカ700

荻原和也著 (アルテスパブリッシング 本体2,500円+税)

 ディスク・ガイドの多くは複数著者によるものが多いが、まずは個人で700枚の件数を論評できるということに敬服。それも原則として同じ音楽家が重複しないとか、近作に限らず重要なものを紹介するというポリシーが貫かれていることなどにも注目。これほどの内容を公平な立場で取り上げることのできる人物がいるということも特筆に値する。それも考えてみれば、聴き慣れた洋楽でも、あるいは身近なアジアの音楽でもない、いわば我々日本人とは縁が遠いはずのアフリカ音楽にここまで打ち込めるというのは、一体どういうことなのか素朴な疑問すら湧く。前書きによれば、父君の影響で幼少時にはラテン音楽のレコードで踊っていたのだとか。何はともあれ、これだけ内容が濃いガイドブックは、もはやアフリカ音楽の教科書といっても過言でない。


神楽感覚
神楽感覚

細野晴臣、鎌田東二著 (作品社 本体2,400円+税)

 細野氏はいうまでもなくYMOのリーダーとして世代を超えて尊敬される人物。もうひとりの鎌田氏は略歴によれば神道系の宗教哲学者で、フリーランス神主を自称している。この両人の対談を主に、いくつかのイベントの出席者との対談が収録されたもの。バリ・ガムラン奏者の皆川厚一氏や、ラテン音楽の浜口茂外也氏なども登場。ここでキーワードとなっている神楽は、広い意味での宗教的音楽や精神的音楽を指し、音楽のもつ根源的な力をさぐるという視点が共通している。一見近寄りがたい、神がかった内容が予測されるが、決して難解なものではなく、むしろ登場する各人の音楽的原体験や意外な過去の経歴も明らかになっていて興味深い内容。細野晴臣&環太平洋モンゴロイドユニットの奉納演奏記録DVD付き。


偉大なる先人たち
偉大なる先人たち

(長唄協会 6,000円)

 長唄協会の80周年を記念して作成されたもの。収録されているのは17人の音源であるが、故人にちなんだ愛用の楽器などの写真が豊富。ホームページでも試聴できる。


リトゥアル~レンゲル×オルティンドゥー
リトゥアル~レンゲル×オルティンドゥー

2009年4月12日 18:30 青山CAY(青山スパイラルB1)

 ジャワ中部バニュマスの伝統舞踊とモンゴル民謡のライブ。舞踊のリアントはジャワ出身の男性舞踊家で、伝統的な作品から現代作品までの幅広いレパートリーをもち、世界各地で活躍。モンゴル民謡は三枝彩子。

SCHOOL 佐野靖

〈BOOK REVIEW〉
定本オリジナル版 リズム・音楽・教育
定本オリジナル版 リズム・音楽・教育

エミール・ジャック=ダルクローズ著/河口道朗編・河口眞朱美訳 (開成出版 本体3,500円+税)

 本書(2009年2月発行)は、既刊訳書(2003年、開成出版)の誤訳、誤記を修正・加筆し、編集者オリジナル版の翻訳として新たに刊行されたものである。リトミックの創始者であるダルクローズの論文集『リズム・音楽・教育』は、「音楽の練習と耳の教育」「学校音楽改革論」「リズム入門」「リトミック・ソルフェージュ・即興」「リズムと創造的イマジネーション」「リトミックと生きた造形術」「リズム・拍子・気質」など全14章の構成で、ダルクローズ・リトミックの思想と理念、内容と方法等にかかわる本質を理解するためには不可欠なテキストである。

 その示唆に富む内容はもちろんであるが、同時に本訳書から学ぶべきは、既刊訳書からこの定本オリジナル版発行に至る編者・訳者の作業プロセスであり、特筆に値する真摯な取組みとなっている。

 既刊訳書の原書(1965年)は、ダルクローズの生誕百年を記念して刊行された版である。既刊訳書の巻末の「解説に代えて」においても、オリジナル版の入手が不可能で、さまざまなエディションを参照し校合したことが述べられているが、このとき、すでにこの定本オリジナル版へのプロセスがはじまっていたともいえよう。ジュネーブのダルクローズ・インスティチュートやジュネーブ大学の附属図書館にまで実際に足を運ぶとともに、さまざまな翻訳版を比較・検討したり、ネットワークによる情報検索を徹底して継続したりしながらも、原典探索の作業が容易に進展しなかった様子は、編者による「オリジナル版について」からも明らかである。結局、編者自ら原典をどう復刻するかを考えるほかはないとの結論に達する。すなわち、「1920年のフランス語版をまず原典とし、1921年のドイツ語版をその一部補充の翻訳と見て、両者を逐一校合し、比較・検討する一方、英語版(1921)およびイタリア語版(1925)をも参照したうえで、欠落している部分を補充して訳出し定本とする」という方法である。

 既刊訳書で欠落していた箇所でとりわけ重要なのは、第5章の「音楽と子ども」におけるリズム論の核心部分(80~81頁)と、学校音楽の位置付けや意義について述べた部分(87~88頁)であろう。前者では、リズムと労働は深く関連し、リズムが日常の労働においてすぐれた役割をはたすこと、人間が機械に隷属させられている今日にあって、リズムを取り戻すことが教育の焦眉の課題であること、リズムの練習は肉体の本性にかかわり、気質の無意識的な表れを発達させること、知力と判断に依存するタクトの練習は、コントロールの能力を伸ばすものであること、教育は神経システムを高度に発達させ、リズムと音楽に対する感覚を目覚めさせなければならないことなどが要点であり、後者では、音楽を識別し、音楽の聞き方を学ぶような授業の大切さが述べられている。

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