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Report & Information 2009年1月

GLOBAL 森重行敏

〈BOOK & DVD〉
ガムラン、ゆらぎの音色
ガムラン、ゆらぎの音色

櫻田素子著 (プリズム 本体2,500円+税)

 バリ島に魅せられる人は古今東西数多い。この本の著者にとってバリとの遭遇は、まずは日本でのガムランとの出会いから始まったとのことだが、やがて足繁くバリと日本を往復するようになる。もともと音楽教育の専門家を目指していた彼女は、日本人でありながらガムラン音楽にはまっていくことについての自問自答や、日本人におけるさまざまな音楽の有り様をも冷静に見つめながら、それでもバリへ通いつめた。いまや日本におけるバリ・ガムランの演奏活動で際立った存在となっている彼女による著書。構成がユニークで、「たとえば、あなたはこんな出会いをするかもしれない。」という文章に始まる、仮想の物語的な進行と、ガムランの楽器やとりまく環境についての解説記事とが、絶妙なバランスで綴られている。写真家によるバリの風景や人々も魅力的で、アルバムとしても楽しめる。自作曲によるCDも付録。


音楽する身体
音楽する身体

山田陽一編 (昭和堂 本体3,400円+税)

 国立民族学博物館での共同研究「音楽と身体に関する民族美学的研究」の成果の一部がまとめられたもの。主に関西で活躍する8人の研究者による論文と、『鳥になった少年』で知られるスティーブン・フェルドの寄稿による。テーマはさまざまで、ロマのヴァイオリンとルーマニアの作曲家エネスクをとりあげたもの、ピアニストになるための矯正器具、電子楽器、バリのガムランによるトランス、ジャマイカの太鼓、南インドのリズムなど多岐にわたるが、いずれも音楽と身体の関係に注目したものばかり。ここでは「音楽とは作品のことである」といったかつての音楽観は過去のものといってよい。冒頭の序文で編者が言及するように、「音楽する」という新しい概念によって、演奏、作曲、受容、舞踊、練習など、すべての出来事が音楽なのだという発想こそ、ますます多様化する音楽をどう受け止めるべきかという問題へのキーワードになるのだろう。


青ヶ島の神事と芸能
青ヶ島の神事と芸能

(日本伝統文化振興財団 VZBG-31 4,200円)

 絶海の孤島、東京都青ヶ島に残る神事と芸能がはじめて島外で公開された、第23回〈東京の夏〉音楽祭2007の記録映像。佐渡をはじめ、島々には古い芸能が残されていることが多い。まして伊豆諸島でも事実上の最先端である青ヶ島は、その交通の不便さからしても、どこよりも神事や芸能の素朴な姿が残っていると考えられる。「見られる」ためのものではない、きわめて貴重な芸能のあり方を知る上でも、貴重な記録といえる。

SCHOOL 佐野靖

〈BOOK REVIEW〉
授業の研究 教師の学習:レッスンスタディへのいざない
授業の研究 教師の学習:レッスンスタディへのいざない

秋田喜代美/キャサリン・ルイス編著 (明石書店 本体2,500円+税)

 「レッスンスタディ」とは、直訳すると「授業の研究」。秋田によれば、日本の伝統的な授業研究が、「『レッスンスタディ』という言葉でアメリカを始めとする海外に1990年代後半に紹介され、2000年以後国際的にも20カ国以上の国の教師たちが、授業研究に取り組むように急速に展開してきている」という。

 2007年、東京大学において行なわれた授業研究についての研究会での報告内容を基にまとめられた本書は、3部11章プラス「コメンタリー」からの構成。編著者2名を含む執筆者15名は、すでに長年授業研究やカリキュラム研究、教師教育の実践研究に携わってきた錚々たる研究者たちで、授業研究の広がりの射程が様々な関係からとらえ直され、レッスンスタディの国際的動向もおさえられている。とりわけ、入門的に読む者にとっては、概念規定や史的展開の概要に関して、第3章「日本の授業研究の歴史的重層性」(執筆:佐藤学)のコンパクトな論述はふまえておきたいところである。そこでは、日本の授業研究の多元性と重層性を歴史的に認識する必要が強調され、「レッスンスタディ」の諸外国への普及が形式主義的であるとの批判がなされている。

 次に、授業実践に直結する論述として、第9章「授業づくりにおける『しかけ』」(執筆:鹿毛雅治)を紹介することにする。

 授業づくりにおける「しかけ」を、「罠に引っかかるのを物陰に隠れてじっと見張っているというような『待ちの姿勢』を暗示する言葉ではなく、常によりよい授業の創造に向けてチャレンジしつづける教師の姿を反映した言葉」ととらえる鹿毛は、「授業のしかけ」の特質を「意図性」「道具性」「事前性」から検討する。例えば、教育的意図の違いから、「収束型しかけ」(特定の知識、技能の習得や定着を目的とした「しかけ」)と「開放型しかけ」(探究を促すための「しかけ」)に大別できるという。さらに、優れた「しかけ」には少なくとも、(1)刺激機能、(2)方向づけ機能、(3)可視化機能授業という3つのはたらき(機能)があるという。そして、「しかけ」には「授業のしかけ」と「授業研究のしかけ」の二重性があり、「子どもたちの学びのみならず、教師たちの学びをも刺激し、方向づけ、可視化する働きがある」と結論づけている。

 さらに、第10章「レッスンスタディを持続させ、豊かにする授業分析の役割」(執筆:的場正美)では、(1)学習する共同体をリードするリーダーの育成、(2)授業研究を促進するツールの開発、(3)教師と研究者のコラボレーション、(4)授業分析を授業研究に位置づける、(5)エビデンスの発見、(6)自分の実践を自分の言葉で語る、(7)事実と分析者を相互規定する授業分析の導入、(8)教育実践に向かい合う教育実践研究の倫理の模索、という示唆に富む8つの実践的提案が示されている。

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