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Report & Information 2008年11月

GLOBAL 森重行敏

〈BOOK & CD & PERFORMANCE〉
おわらの恋風
おわらの恋風・胡弓の謎を追って

横田庄一郎著 (朔北社 本体1,900円+税)

 富山・八尾町で多くの観光客を集める初秋の行事「風の盆」。その歴史そのものも未詳な部分が多いが、何といっても特徴的なのが胡弓の存在。キリシタン音楽や日本の音律学の研究などの著書もある本書の著者も、どうやら風の盆の魅力に取り付かれたようで、綿密な調査とともに日本の胡弓の歴史にも疑問を抱くに至る。その結果は、従来いわれてきたような中国からの影響より、キリシタン禁制以前の西洋楽器との関連を匂わせるものであった。キリシタン音楽の研究は近年急速に進んでいる。宣教師たちの日誌が祖国に残っているからで、幕府の苛酷な禁令により資料が残されていない日本国内では解決しない。また、日本の胡弓と東南アジアの擦弦楽器との類似も従来から指摘されている。こちらもまた、オランダ商船等の記録により解明されていく可能性がある。日本音楽の研究が国内にとどまっていては進展しないことが各分野でも指摘されている。唱歌と讃美歌の関係、ジャズと流行歌など、まだまだあるだろう。グローバルな視野がこれからの音楽研究に不可欠であることを本書からも痛感させられた。


ザ・ワールド・ルーツ・ミュージック・ライブラリー
ザ・ワールド・ルーツ・ミュージック・ライブラリー

(キングレコード KICW-85001~191 全150タイトル 1枚組1,800円~3枚組3,500円)

 日本のキング、ビクターの両社が世界でも有数のワールドミュージック音源の宝庫であることは案外知られていない。過去にも何度か全集ものが企画されてきたが、今回、いわば最終企画とでもいえる規模での再発売が実施された。CDそのものがもはや時代の趨勢から取り残されつつある。コンピュータへの直接配信が主流となりつつある今、おそらく今後二度とこうした企画は不可能となろう。今回は過去の再発売だけでなく、お蔵入りになっていた音源も活用され、文字どおりの音楽遺産ライブラリーとなっている。内容はヨーロッパ6編、アフリカ9編、西アジア11編、中央アジア6編、南アジア26編、東南アジア49編、東アジア31編、南北アメリカ12編。中でも質、量ともにインドネシアが圧倒的で、欧米が少ないのが特徴。中には先駆者というべき小泉文夫元芸大教授自身の録音もあるが、実は彼はCDの存在を知らずに他界している。技術の進歩と変遷のスピードをも改めて実感。


ノンサッチ・エクスプローラー50
ノンサッチ・エクスプローラー50

(ワーナーミュージックジャパン WPCS-21301~350 全50タイトル 各1,200円)

 上記と時を同じくアメリカ発の老舗レーベルの再発売も発表。かつてLP時代に名盤と言われたものの復活もさることながら、新発売も含め廉価なのも嬉しい。1970年代にアナログな機材で収録された音源はまさに血の通った音色がする。


韓国古楽器・伽耶琴公演「ソリの道をさがして」
韓国古楽器・伽耶琴公演「ソリの道をさがして」

2008年11月8日 大井町きゅりあん小ホール 14:00、18:30
2008年11月10日 名古屋今池ガスホール 19:00

 かつて東京芸大でも教鞭を取ったことのある池成子(チ・ソンジャ)による久しぶりの来日公演。伽耶琴(カヤグム)は韓国の箏で、日本の箏のような爪は使わず、ビブラートの利いたやや低音の魅力。

SCHOOL 佐野 靖

<BOOK REVIEW>
河合隼雄の“こころ”
河合隼雄の“こころ”―教えることは寄り添うこと

河合隼雄著 (小学館 本体1,300円+税)

 本書は、臨床心理学者であり、文化庁長官も務められた河合隼雄氏による連載「子どもの心、教師の心」(『総合教育技術』2004年4月号~2006年9月号)を中心にまとめたものである。連載を読まれた方も多いと思われるが、ここでは、とりわけ印象深い文章や言葉を取り上げることにする。

 例えば、「5 教師の指導力」では、「短絡的に『指導』とか『力』ということに、こだわらないことが大切」とし、「教育は…子どもを『育てる』、子どもが『育つ』のを助ける、という面も持っており、それは力ずくの仕事ではない」と強調する。つまり、「子どもが力を発揮しやすい状況を適切に準備することが必要」というのである。そして、「『悪は許さない』、『悪の意味を考えてゆこう』という、一見両立し難いことを、両立させる努力を払っている間に、教師のそのような姿勢から自然に指導力がにじみ出てくる」と締め括っている。また、「8 『聴く』ことの大切さ」では、「同じ『場』に立ってはじめて伝わるものがある」と、子どもや教師仲間らとも「互いに共有する『自由の場』」の必要性を説き、さらには、「コミュニケーションで一番大切なことは『聴く』こと」であり、保護者等に怒鳴り込まれたときなど、「一度だまされたと思って、ひたすら聴くことをしてみてください」と提案している。

 「12 学力」では、学力低下を問題視し、騒ぐ日本の状況を先進諸国と比べつつ、「人間が自分の生きる道を考えること、本当の幸福とは何かを考えること、これらの観点から、子どもたちを見る目を日本人は持っていないのではなかろうか」と問題提起を行なっている。「学力が大切ではない、とは言わない。しかし、それに『こだわる』のは問題だ」とし、むしろ国際的調査の結果において、「数学(理科)の勉強に対する自信」が、学力結果よりも際立って低い状況を問題とすべきではないかとの著者の声を重く受け止める必要がある。

 「27 音楽は楽しい」では、フルートを演奏する著者らしく、「いったい笛を吹いて、自分の心が誰かに伝わるなんてことがあるだろうか」ということを、笛を吹きながら小学校6年生の子どもたちと考えたエピソードが披露されている。初対面の子どもたちと心を通い合わせ、つながっていくのに、音楽はとても有効だという。そして、「楽しみを深めると必ず苦しみがついてくるが、その苦しみは乗り越えやすい」と述べ、まず音楽の楽しさを教える必要性を強調する。また、日常生活を離れたところで歌うこと、クラスの誰もが重唱歌をもつことなどの大切さにふれ、「ともに心を通わせながらアンサンブルをする楽しさを、子どもたちに味わわせてやりたい」という率直な思いが語られている。

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