CD・DVD・書籍・イベントご紹介

ONKANウェブネット > CD・DVD・書籍・イベントご紹介 > Report & Information > 2008年9月

Report & Information 2008年9月

GLOBAL 森重行敏

〈BOOK & PERFORMANCE〉
現代日本社会における音楽
現代日本社会における音楽

月渓恒子ほか編 (放送大学教育振興会発行、日本放送出版協会発売 本体2,300円+税)

 現在放送中の放送大学ラジオ教材の1冊。本年度から新たに開講されたこの講座でとりあげられるテーマは、学校教育、吹奏楽、伝統音楽、オーケストラなどから始まって、ジェンダー、ポピュラー音楽、映画音楽、世界音楽まで幅広い。いずれもかつて主流であった名曲鑑賞、演奏技術向上、大作曲家の伝記といった定番の内容ではなく、現代の日本において音楽の置かれた状況を客観的に分析することに主眼がある。思えば黒船来航から150年、ようやく自らの音楽状況を冷静に観察できる余裕が出来てきたというべきなのだろうか。なお、本欄担当者としては深く関連のある、ガムラン音楽が日本に導入されてから今までの約30 年の歩みが概説されている章もあって、いささか手前味噌ではあるが感慨深い。


三拍子の魔力
三拍子の魔力

なかにし礼著 (毎日新聞社 本体1,800円+税)

 いわずと知れた歌謡曲作詞家であり、直木賞作家でもある著者はクラシック・マニアともいうべき存在でもある。ベートーヴェンの第九に訳詞をつけたことも知られているが、そのシラーの原詩の話から、話はフリーメイソンがらみでモーツァルトへ、そしてシューベルトやプッチーニ、チャイコフスキーにまで話は広がる。ぐいぐいと読ませる展開はさすがで、途中に間奏曲として地中海、中国、コンサート批評も挟まるという構成。ここでいう三拍子の多くは、フリーメイソンを象徴する「3」という数を指す。それにしても、従来から「魔笛」の構造との関係などが指摘されながら、秘儀として明かされてこなかったフリーメイソンの入会儀式の様子なども、さまざまな資料を活用して紹介されているのは驚き。


ジョゲッ・ピンギタン
ジョゲッ・ピンギタン

2008/9/17・18 19:30~ 両国シアターχ(カイ)
 80代の長老女性舞踊家チュニックによる幻のバリ舞踊。竹ガムランによる伴奏がつく。松江、大阪、名古屋、京都、甲府でも公演。


説教節をぐり「小栗判官・照手姫その一」
説教節をぐり「小栗判官・照手姫その一」

2008/9/13 19:30~
2008/9/14 14:00~・19:30~
2008/9/15 14:00~
両国シアターχ(カイ)
 遠藤啄郎、ケイタケイ演出による仮面劇。

SCHOOL 佐野靖

〈BOOK REVIEW〉
現代中国音楽教育論
現代中国音楽教育論

曹理編著/河口道朗訳 (開成出版 本体3,200円+税)

 「著者まえがき」によれば、1989年に「普通学校音楽教育学研究」という課題が国家教育委員会によって芸術教育の科学的研究の重点項目として指定され、1990年末には中国音楽協会に音楽教育学学会が設立された。1988年に『普通音楽教育学概論』を編集した筆者は、以降『普通学校音楽教育学』の編集をはじめ、多くの著作を世に送り出した。原書は2000年に出版。2008年に本訳書(一部は割愛)が刊行された。

 原書の特徴として、総合型ではなく「課程型」であること、小・中学校の音楽教育実践との密接な関連を重視していること、諸外国の発展動向を把握していることなどがあげられている。訳書全体は、序論と「音楽教育の本質的特徴と社会的機能」「音楽教育課程」「音楽表現の学習と教授」「音楽鑑賞の学習と教授」「音楽授業の方法」など11の章から構成。以下では、第5章「音楽創作の学習と教授」について簡潔に紹介する。

 創作の意義としては、「生徒が音楽の実践活動に参加する重要な部分である」、「創造的な思考能力を発達させ、創造の実践的能力を強化することは、音楽創作の学習と教授の出発点、原点である」、「音楽の知識と技能を獲得する重要な方法である」ことの3点があげられている。また、小・中学校を通じて「即興と作曲」の内容が示されているが、例えば小学校段階では、「生徒の即興の創作や表現の形式を用いて自己を表現する意欲を培い、即興創作と即興表現の能力を伸ばす」、「教師の指導のもとで創造的思考と実際の作曲能力を伸ばし、音楽に対する理解力を高め、音楽に関する要素、構造、表現手段および読譜、記憶などの知識と技能を獲得する」ことの2つが大きく求められている。

 具体的には、実践提案の特徴が、他の表現活動や鑑賞活動と関連付けられていること、すなわち、モデルとなる作品を表現・鑑賞し、分析する活動が結び付けられていることである。創作の授業であっても、表現や鑑賞の学習、音楽の知識の学習、理論の総合復習が有機的に組み合わされている。さらに、「指導-発見学習」をモデルとした小学校高学年の実践例は、授業過程が「導入」「探求」「活用」の3段階で構成され、「活用」は、「独自にあるいは半ば独自に創造的な練習を通して、知識を転移、強化する段階」と位置付けられている。創作において「既存の知識と現在学習している問題を随時に結合し、生徒が積極的に創造的な思考と発見を行うよう促進」することが求められていることは明らかである。

 「音楽の芸術教育による美育を目指し、それを全面発達の一貫として位置付ける」という、現代中国の確固とした教育の思想と施策からは、学ぶべき点も多い。

ページの先頭へ戻る