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Report & Information 2008年7月

GLOBAL (森重行敏)

【BOOK】音盤博物誌

片山杜秀著 (アルテスパプリッシング 本体1,900円+税)

 先に発刊された〈音盤考現学〉に続き、レコード芸術誌に連載されたCD紹介の単行本化。著者は近代日本音楽と思想史の研究で注目されている。その音楽体験の原点は伊福部昭の映画音楽ということで、日本人作曲家再評価の功績こそ著者の本領発揮。紹介されている全50編のCDレビューの中でも、芸大出身作曲家による信時楽派の命名や、軍楽隊出身の斎藤高順の評価など出色。平井康三郎をめぐる「戦時日本語母音明瞭化運動論序説」も興味深い。一方《魔笛》のストーリーが支離滅裂であるという定説に反論して、アジア的な陰陽の平衡こそ真のテーマと喝破した「エジプトの王女と日本の王子」も全編狂言仕立てで傑作。

【BOOK】日本流行歌変遷史 歌謡曲の誕生からJ・ポップの時代へ

菊池清麿著 (論創社 本体3,200円+税)

 戦前の歌謡曲黄金期、戦後の復興期、ビートルズ以後、Jポップの時代へという大きな流れで歌謡曲の歴史を総括した書。すでに藤山一郎、鳥取春陽、古賀政男、東海林太郎、中山晋平らの評伝をまとめた著者の集大成ともいえる。巻末には紅白歌合戦の全曲記録もあって、史料的価値も高い。21世紀の今、レコードとともに興隆した歌謡曲の歴史も一世紀分の重みがある。唱歌、童謡と並んで庶民が支えて来た「流行歌」への評価も変わりつつあるのだろう。

【CD】幻の琉球王府宮廷楽「御座楽」(うざがく)

(日本伝統文化振興財団 VZCG-681 3,000円)

 かつて琉球王国の宮廷音楽であった御座楽の復元。首里城の復元などと並んで10年がかりで行われたプロジェクトの成果が結実。台湾で製作された復元楽器は、琵琶、月琴、揚琴、二絃、三絃、四胡、洞簫、銅鑼など多岐にわたる。

SCHOOL (佐野靖)

【BOOK】音楽する子どもをつかまえたい:実験研究者とフィールドワーカーの対話

小川容子・今川恭子編著 (ふくろう出版 本体2,381円+税)

 本書は、広くとらえれば、音楽教育学研究者として研究対象や課題意識の重なり合う者同士、狭義には、研究手法等の大きく異なる者同士が、互いの考え方や視点、アプローチ方法などに興味をもち合い、教え合い学び合うプロセスにおいて、子どもが音楽し学び合う姿を「できるだけきめ細かく浮き彫りにすることを試みた」ものである。

 全体は6章から構成され、第1章「子どもはどうやって学ぶの?」と第3章「子どもの『声』を考える」を実験研究者(小川容子)が、第2章「環境―関係―身体―学び」と第4章「声を出す、声でかかわる、そして歌う」をフィールドワーカー(今川恭子)が中心となって担当。2名の研究者を加えた第5章は、「子どもの音楽的発達」について4名の執筆者がそれぞれの立場を踏まえた提案を行い、「研究の枠組みを越えて」と題された第6章では、4名による自由な討議が展開されている。

 本書の魅力について、ここでは以下の3点をあげておきたい。

 第1は、音楽教育学研究において、ともすれば対置されかねない、実験研究と質的研究をうたうフィールドワークを専門とする両者が、互いの研究を認め合い評価し合いつつ、忌憚ない意見を出し合い、新たな発見や気付きに自身の研究意欲を刺激されたり、相互の距離感の変容ぶりを楽しんだりしている姿がひしひしと伝わってくる点である。

 とりわけ、第1~4章の最終節における相反する立場からのコメントは、実に興味深い。賛同できる部分、評価できる部分は堂々と述べた上で、疑問、不満、反論を展開し、時には提案や要望、自らの反省なども盛り込まれた叙述は、読み応えのある内容となっている。

 第2は、子どもの日常生活、子どもが音楽する実践の状況に基づいた研究、ならびに議論が展開されている点である。子どもの置かれた状況と音楽的な学びの関係性をていねいにきめ細かくとらえようとするプロセスは、大変共感できるものである。

 第3は、それぞれの分野における研究動向がしっかりと踏まえられており、しかもわかりやすい説明がなされている点である。定説や固定観念に縛られず、真摯な研究実践において獲得された情報やデータ、培われた感覚や経験に基づいた研究レビューは、説得力あるものとなっている。専門書としても、また研究の入門書としても活用できるテキストである。

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