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Report & Information 2008年4月

GLOBAL (森重行敏)

【BOOK】事典・世界音楽の本

徳丸吉彦、高橋悠治ほか編 (岩波書店 本体8,000円+税)

 タイトルから連想するのは、世界各地の音楽が網羅されたいわゆる概説書を思わせるが、いざ開けてびっくり、リズム、音色、制度、20世紀音楽史、日本音楽の20世紀、グローバリズムと現代の問題、という六つの項目が並び、60名におよぶ執筆者の陣容もかなり異色な構成といえる。あとがきでも明かされているが、当初の企画からこの内容に落ち着くまでに随分と試行錯誤があったようだ。結果として、個々の民族の音楽について知るというより、我々日本人にとって、音楽とは何かという、もっとも根源的な問いかけに対する、さまざまな切り口からの最新の見解が並ぶこととなった。思えば、ようやく我々が音楽を単なる教養でも伝統でもなく、足元を見つめることからやり直さなければいけないということに気が付いたことの証であろう。その意味でも、この本のタイトルは意味深長であり、またいささか議論の余地のあるところかもしれない。

【BOOK】知っているようで知らない・管楽器おもしろ雑学事典

佐伯茂樹著 (ヤマハミュージックメディア 本体1,700円+税)

 オーケストラの弦楽器が発音原理の統一された集団であるのに対し、管楽器の多様さは対照的ですらある。リードの有無、種類、楽器の性能も実に千差万別で、ひとりの著者がそれらを統一的に紹介するのは案外難しいことかもしれない。本書の著者は各種の管楽器に通じたその道の達人で、かつての〈名曲の常識・非常識、オーケストラの中の管楽器考現学〉という著書は「音楽鑑賞教育」誌でも紹介したことがあるが、なぜ管楽器にはB管やEs管があるのかという考証には目からうろこの思いであった。今回も当事者でなければ説明できない細かな構造上の解説など、興味深い内容が盛りだくさん。

【CD】響・宮城合奏団委嘱作品集

(日本伝統文化振興財団 VZCG8387-8 2枚組 5,000円)

 宮城道雄直系の現代邦楽合奏団の大御所であるが、流祖亡き後は新作の委嘱も続けている。そうした新作ばかりを集めた企画。1曲目の『春の海幻想』は言わずと知れた『春の海』を牧野由多可が編曲したもの。聴き慣れた前奏からして変奏されており、不思議な展開が期待をあおる。原曲を各所に散りばめながらも、大合奏らしい変化のある構成が楽しい。ほかにも牧野による宮城曲の大編成化作品や、惜しくも先日亡くなったばかりの長沢勝俊作品なども収録。

SCHOOL (佐野靖)

【BOOK】アクティブ・マインド──人間は動きのなかで考える

佐伯胖・佐々木正人編 (東京大学出版会 本体2,800円+税)

 本書は、判断や知覚を、いわば「静止した身体」の営みとして扱いがちであった従来の知覚心理学や認知心理学に対し、「人間がつねに動き回り、外界に働きかけることによって認識をつくりだし、修正し、そして外界について、より確かな情報を抽出している、ということを、なんとかして浮き彫りにしよう」という主旨に貫かれている。

 全体は、序章プラス9章から構成されていて、各章担当の研究者たちが、それぞれ自分の得意とする研究分野のトピックを選び、「視覚」「姿勢」「感情」「記憶」「概念形成」「言語活動」(対話、読み)などの切り口から論を展開している。

 現実の社会の第一線で活躍している人は、「動いている」なかで「考えて」おり、「考える」ことがそのまま同時に「動くこと」になっているのではないか、という問題意識に基づき、さまざまなアプローチによって、認知活動が「人間の外界や他人への積極的な働きかけのなかで形成され、そういう活動の文脈のなかでいきいきと躍動するものであること」を示そうとする本書には、これまでの思い込みや固定観念をとらえ直し、新たな発想や意識転換につながるヒントが盛り込まれている。

【BOOK】使える読書[朝日新書003]

齋藤孝著 (朝日新聞社 本体720円+税)

 本書は、週刊誌〈AERA〉における連載から厳選再録された50余のコラムが中心。ただし、音楽教育に携わる者としては、むしろ冒頭の「取扱説明書」の内容が興味深い。

 物語の筋を追うだけの読み方から卒業し、「概念化」や「引用探し」を提唱する著者によれば、「概念化」とは、「本一冊からキーワードひとつ、いただいてしまう」こと。が、そこでは、例えば「言い当て力」や「問答力」というふうに、キーワードを概念化する試みが実践されている。また、「引用探し」、つまり筆者の渾身の一文を切り取ることによって、「目を付ける」センスが磨かれ、さらには、「受け身の読書ではなく、攻めに転じる読書になるから、その道は『使える読書』に続いている」という。

 読書にも「フォーマット」が必要であると強調し、本は読みものとしてだけではなく、「それを読んで『書く』ためにある、『話す』ためにある」ととらえ、読む前と読んだあとでどれだけ変わることができるか、をつねに問い掛ける著者。理念だけではなく、その提案にしたがって自ら実践した具体例を提示している本書は、作品の「解釈」を、鑑賞や演奏表現、あるいは創作に結び付けていくような音楽活動を形づくるうえで示唆に富むものであろう。

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