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Report & Information 2007年11月

GLOBAL (森重行敏)

【BOOK】地球音楽出会い旅

水野信男著 (スタイルノート 本体2,000円+税)

 兵庫教育大名誉教授の著者にとって3冊めにあたる随筆集。おもに邦楽ジャーナルに連載されたもので、副題どおり、日本各地の暮らしの歌から世界の諸民族の響きまで、時代を越えた音紀行という内容。記事の中には70年代のものから最近のものまでが混じっているが、邦楽教育をめぐるさまざまな動きの顛末など、年月が経った今、改めて事の成り行きを見直すよい機会ともいえる。

【BOOK】イラン音楽 声の文化と即興

谷正人著 (青土社 本体2,600円+税)

 イランすなわちペルシャ音楽について日本語で書かれたものはほとんどない。今まで知られているのは、即興性の強い音楽であるということと、アーヴァーズなどいくつかの用語くらいであろう。本書は現地に留学した著者が実体験をもとに、即興演奏とはどうやって学んでいくものなのかというプロセスに注目した構成になっている。あえて概説書にはしないという断り書きがある通り、独自の視点による分析であるための難解さは避けられないが、あくまで現地での実技習得の経験のない読者を想定した論述であり、即興とは何かという大きな問題に正面からぶつかって、解明しようとする態度は頼もしい。参考CD付き。

【CD】菊原光治・地歌箏曲の世界

(コロムビア 5枚組 税込15,000円)

 地歌の本場大阪で故菊原初子の後継者として近年進境の著しい、菊原光治による箏曲と地歌の集大成。箏組歌や段ものの雅びな世界から、地歌の典型である三絃弾き歌いによる廓情緒、あるいは浄瑠璃的な趣もある芝居歌や滑稽な内容の作ものというジャンルまで、ひとくちに地歌箏曲といってもその世界の幅広さには改めて目を見開かされる。箏、三味線、時には胡弓までを使いこなし、楽器を交替しながら家庭的な合奏を楽しむという地歌のあり方は、劇場で発達した歌舞伎や文楽などとは違う意味で、高度で繊細な音楽性をもっている。なかでも端歌ものと呼ばれる小品はいわゆる上方舞の伴奏にも用いられることも多いが、本CDではその雰囲気にふさわしい胡弓入りの演奏も数多く収められている点が貴重である。段ものでは六段、乱れといったポピュラーなものではなく、珍しい九段の調べがとり上げられている一方で、ゆき、残月などの地歌の定番曲から珍しい半太夫ものなどもあって、文字どおり地歌のいろいろを知るための保存盤としても文句なしの内容となっている。久保田敏子氏による解説も充実している。

SCHOOL (佐野靖)

【BOOK】教育人間学のために

西平直著 (東京大学出版会 本体2,600円+税)

 著者がこれまでに発表した論文・研究報告等を7つの章と4つの幕間劇に編み直した本書は、教育と人間に関する深い思索に満ちあふれている。くり返し教育の本質を考え続けるための格好のテキストへの導入として、ここでは、「あとがき」に書かれた本書の狙いを紹介することにしたい。

 「この本は、教育と人間を大切にする。しかし、この本の狙いは、教育から離れ、人間から離れることである。『離れる』とは、この場合、縛られないこと、距離をとること。しかし、離れ去ってしまうのではない。もう一度出会い直す。引き受け直す。そうした還り道のダイナミズムを含んだ『離れる』である。」

【BOOK】教師教育の創造――信濃教育会教育研究所5年間の歩み

稲垣忠彦著 (評論社 本体2,500円+税)

 本書は、教育方法研究、授業研究を軸に教師教育に携わってきた著者が、2001年より所長に就任した信濃教育会教育研究所における5年間の実践研究の記録である。教師の自律性・専門性を形成するためには、教師教育、とりわけ現職教育の創造が不可欠であり、本書にはそれに対する熱い思いが込められている。

 著者のいう「現職教育」とは、「実践者である教師自身が、自らの実践をふりかえり、その省察をとおして成長していくことであり、さらに一人ひとりの省察にとどまらず、共同の省察をとおして自らを変えていくことが重要であり、それは専門家としての教師の成長Professional Developmentである」。学校・教室からの改革、地域からの改革の大切さを実証的に訴える本書には、現職教育をとらえ直していく上で貴重な問題提起や示唆が含まれている。

【BOOK】教育ルネサンス 教師力

読売新聞教育取材班著 (中央公論新社 本体1,700円+税)

 「先生たちの応援団であり続けよう。問題を批判することよりも、問題を前提にしつつ、前向きな取り上げ方をしよう。それが問題解決につながるはずだ」というスタンスで、読売新聞朝刊で続けられている長期連載「教育ルネサンス」。本書は、その中での「教師力」のシリーズを再構成、加筆したものである。

 「教師力」とは、「授業力と人間力を併せもつことで発揮できる力」。学級崩壊、不登校、学力低下などさまざまな問題に揺れる今日の教育現場では、これまで以上に教師の「質」が問われ、真の「教育力」が求められている。このような状況把握、課題意識に立つ本書では、全国各地の数多くの取組み、さまざまな試みが7つの章にまとめられている。

 例えば、第1章「探る」「学ぶ」の中には、保護者や地域住民が《第九》を歌う活動を通して道徳の授業と結び、学校と地域がつながっていった実践や、道徳教材「心のノート」からさまざまな曲が生まれ、心の輪が広がっていった活動が報告されている。各実践に関する記述はきわめて簡潔なものであるが、その一つずつが大きな勇気を与えてくれる。

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