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Report & Information 2007年8月

GLOBAL (森重行敏)

【BOOK】音楽文化学のすすめ

小西潤子,仲万美子,志村哲編 (ナカニシヤ出版 2,500円+税)

 「いま、ここにある音楽を理解するために」を副題にもち、全14章から成る論文集。おもに関西で活躍する中堅の研究者によるもので、音楽をめぐる昨今の問題点や新しい観点がいずれも簡潔にまとめられている。大きく7部からなるが、目次に添えられたキャッチフレーズが興味深い。例えば、「文化の交差──いかにして、近代以降に東西の音楽が互いに受容され、新しい様式が生み出されたか?──」「参加型活動──いかにして、コンサートに代わる創造的なコミュニティ音楽が生み出されるか?──」など、音楽研究の対象が、作曲家の伝記や作品研究などが中心テーマであった時代から、音楽と社会との関わりへと向けられていることがよくわかる。「テクノロジー」の項では伝統的な尺八の楽譜をコンピュータで出力する方法が取りあげられているが、ここでも尺八の譜を五線化して分析するとか、統一的な新しい記譜法を提唱するというのではなく、あくまで伝統的な譜を流派ごとにどう出力するかがテーマである。グローバル化とともに価値観の多様化が認識されるようになった昨今、冒頭の副題にもあるように、まずは「あるがまま」を理解することこそ、新たな文化研究のあり方なのであろう。

【BOOK】音楽革命論

玉木宏樹著 (出版芸術社 1,800円+税)

 ヴァイオリニスト、作曲家としての活躍のかたわら純正律についての研究、普及活動に邁進し、自ら純正律音楽研究会も主宰する著者の新作。平均律やドイツ偏重音楽史への盲信をことごとく否定するとともに純正律の効用を熱く説く。ピタゴラス音律の適用という点からも邦楽の見直しを提唱している。

【CD】三味線独奏曲集

野澤徹也 (SION RECORDS SCD-013~015 5,000円+税)

 現代邦楽曲における三味線は、合奏はともかく、純粋の独奏曲となると決して多いとはいえない。その点で明治以降、洋楽的なアプローチにもすぐ反応した箏曲とはかなり事情が異なるようだ。歌舞伎や日本舞踊など伝統的な舞台芸術があるところに三味線は不可欠で、今なお演奏への需要も衰えてはいないが、逆にそのことが、真に新しい音楽が余り必要とされない状況を作っているのかもしれない。そうした中、このところ次々と独奏曲の録音に挑戦し続けている細棹三味線の若手のパイオニア、野澤徹也が今回世に出したのはCD3枚組のアルバム。作曲年代が一番古い杵屋正邦『去来』が1967年。最新曲は今年の初演という全20曲で、とりあげた作曲家も三木稔、池辺晋一郎といった重鎮から若手に至るまで20名。三味線の特性上、語りや歌の伴奏であれば、その含蓄あふれる音には無限の可能性があるが、独奏となればむしろ孤立無援の厳しさがある。1974年生まれの彼にとって邦楽もまた国際的な音楽の一つに過ぎないであろう。ルー・ハリソン作品やマーティン・リーガンへの委嘱作『マカーム』など、もはや日本という枠を飛び越えた汎アジア的作品にも注目したい。

SCHOOL (佐野靖)

【BOOK】確かな学力と豊かな学力──各国教育改革の実態と学力モデル──

原田信之編著 (ミネルヴァ書房 2,400円+税)

 日本の学力の近未来を展望するために、主要各国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、フィンランド、韓国、シンガポール)において学力がどのように捉えられ、どのような学力モデルのもと改革が展開されているのかについて調査研究を進め、その成果をまとめた書。制度面での政策を含めた広い意味での学力向上策に焦点を当てつつ、議論の基盤になる学力観や学力モデルを読み解くことが本書の眼目である。

 編著者によれば、「米英型の新自由主義政策」対「独仏型の社会的不平等の是正に重点を置く政策」という新たなるイデオロギー対立が生じている世界情勢を鑑みて、上記の国が選択されている。すなわち、「前者が、市場主義的なメカニズムを導入して学校間の競争を喚起し、各学校のパフォーマンスを高めることで学力水準の向上を図るものであるとすれば、後者は『格差是正』や『教育の機会均等』の理念の実現へと向かって、教育行政、学校や教師、保護者の間のコンセンサスの形成を重視するものとして、一応の区別をつけることが可能」であるという。ただし、教育の地方分権を伝統としてきたドイツでも、統一的なカリキュラムが導入されるなど、両者を単純に割り切ることはできない。

 また、新しい学力観への移行を進める韓国とシンガポールは、第3の極として位置づけられる。日本の生活科と対比される「かしこい生活」に見られる韓国の学力観と今日的社会を背景にした教育改革の問題状況、「革新・創業精神」の育成に焦点化し、全人教育やゆとり教育、コミュニティ奉仕活動などを強く推進しようとしているシンガポールの改革モデルは、学力改革を考えていく上で大きな示唆を与えてくれる。

【BOOK】学びのための教師論

グループ・ディダクティカ編 (勁草書房 2,600円+税)

 本書は、共同研究会メンバーによる「学び」シリーズの第3弾。教師(教育)論と教育実践論(授業論・カリキュラム論など)を教師という存在(フィールド)において接合しようとする研究デザインのもとで企画・編集された本書には、「教師の学び=力量形成の現実を捉えながら、それに影響を与える要因を検討し、自律的な力量形成の方途を探るという課題のもとに執筆された論考」が収録されている。

 全体は、「教師の力量形成とその契機」「学校文化と教師の力量形成」「教師の力量形成にかかわる諸制度」の3部構成。第3部を除く各章には、フィールドワーク(参与観察やインタビュー)及びアクション・リサーチを通した事例研究が示されている。教師の力量形成過程へのライフヒストリー的アプローチは大変興味深い内容で、実践的意味を見出す上での貴重なヒントが提供されている。

 本書のタイトルには、「子どもたちの学びのために教えつつ、そこから何事かをつかんでいく教師の学びについて論じる」という意図が込められている。

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